【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~


「…俺らしくないな」


目から零れ落ちたのはきっと、この煙のせいなんだろう。


そう思ったところでまた、建物から爆発音が聞こえてきた。



本当に終わったんだな。



まあ、あの男が生きている限りこの研究は終わらない。


それでもこの研究所を消滅させる事が、俺にとっての終わりなんだ。




さ、行くか---


いま一度、目の前で燃え盛る研究所を見て、それから背を向け歩き出した。





「綾香…、幸せにな」



夕闇の空に黒煙が立ち昇るのを見ながら、ポツリとそう呟いた。


小さく呟いたその声は誰に聞かれる事もなく、黒煙と共に消えていく---



  【恢SIDE END】


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