【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
「こいつはもう俺の女なんだ。誰も近づくなよな」
「…女心とは気が変わりやすいもの。わたしは気長に綾香を待つ事にいたします」
「待つんじゃねぇッ!」
時政先輩を威嚇しながら私にギュッと抱きついてくる蓮に、思わず目を細めてしまった。
本当、蓮はヤキモチ焼きなんだね。
でも、そんな風に思ってくれるのは素直に嬉しいので、蓮の胸に顔を寄せていた私はひっそりと顔を綻ばせる。
「綾香殿が蓮殿を好きなのでしたら、それでいいではないですか」
「「自分には静香さんがいるからって、ちょっと人事だよねぇー」」
「そうだ。お前は黙ってろ」
皆からの総攻撃にシュンとなる章吾に思わず笑みがこぼれた。