【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
次の日、やはり恢は学園に姿を現すことはなかった。
数日経っても現れる事のない学園の人気者のの一人である風紀委員長の失踪に、学園の皆がざわついた。
しかし一ヶ月もすれば、学園はいつも通り落ち着きを取り戻す。
風紀委員長の座は副委員長である、一年生の夏目静香がなった。
一年生が委員長に着く事に生徒達から強い反発が出るのかと思いきやそれはなく、すんなりと決まる。
落ち着きを取り戻した学園内でそれでもたまに生徒から、恢に関する情報が聞えてきた。
恢を町で見かけたと言う情報だ---
その噂が本当だったらな…と、瞳を閉じる。
恢は今、幸せに暮らしているだろうか?
いつも寂しそうにしているその瞳が、少しでも幸せに満ちていたら嬉しい。
ねぇ、恢?
あなたは今、幸せ?
ううん…、そんな事聞くのは野暮ってものだよね。
だって今の恢はきっと、幸せに暮らしているはずだから---
恢…、
そうだよね?
瞳を閉じたまま、心の中で恢に問いかけた。