【完】イチョウ~あたしは幸せでした~
「さ、桜井くんここ、ここ。」
「あ、通り過ぎるところだった。」
そう言いながら桜井くんはあたしから手を離した。
「いつも送ってくれてありがとう。」
「気にすんな。次は忘れんなよ。手袋」
そう言って桜井くんはあたしに背を向けた。
大きな背中が見えなくなるまで見つめてから家に入った。
「ただいま~」
今日はお兄ちゃんいないんだった。
彼女の家に行くって言ってたな。
そう思いながらリビングに入った。
「あ。お兄ちゃん……」
テーブルには夕飯が置かれていた。
それをレンジで温めて食べた。