【完】イチョウ~あたしは幸せでした~
しばらくの間沈黙が続く。
あたしは下を向いたまま顔をあげられない……
真正面に蒼が座ってるから。
蒼の顔は見慣れてるって思ってたのに、雰囲気が違うと
なんだか、見られない……
「……」
「……」
ドキンドキンドキンドキン──……
だんだんと心臓の音が大きくなってくる。
こんなに静かな場所でそんなに大きな音にならないでよ……
蒼に聞こえちゃうじゃん……
「舞衣、」
沈黙の中に低い声が響いた。
「舞衣、見てみろ。」
そう言って指をさしているのはキラキラ光る街の明かり。