【完】イチョウ~あたしは幸せでした~
「俺、あんまり桜井の事知らねえけど、
アイツがあんなこと本気で言ったとは思えない。だから泣かなくていいよ」
そう言ってすぐに離れた。
「抱きしめてごめん。
ただ、そう伝えたかっただけだから。」
そう言って来た道を帰って行く新谷くん。
「あ!」と言ってまたあたしの方を向く。
「?」
「俺、彼女いるから、心配しないで、
本当に慰めただけだから、
二股かけるほど俺は器用じゃないんでね」
そう言って笑顔で去って行った。
……何よ………もう…
「ふふっははっ!おかしいっ…」
新谷くんのおかげで
いつの間にかあたしの顔には笑顔がこぼれていた。
そうだよ。蒼はあんなこと言う人じゃない!
あたしが信じなくて
どうすんのよ………――――