【完】イチョウ~あたしは幸せでした~
あたしは家に着くまで、携帯を胸の前で抱きしめていた。
嬉しかったから。
蒼にとっては“ただの友達”に過ぎないかもしれない。
でもあたしにとっては“好きな人”だから……
また今日も嬉しくて
寝られないかもしれない……
「じゃあな。舞衣!」
「うん!!バイバイ!蒼!!」
蒼の〝舞衣〟と呼ぶ声に、
毎回胸を踊らせるあたし。
こんなんじゃ、
心臓がいくつあっても足りないよ…
なんて、考えてハッと我に返り、
前を向くと
蒼はあたしを見て微笑んでくれた。
今日は昨日よりも落ち着いて
蒼の背中を見ることが出来た。
「ありがとう、蒼……」
そう呟きながら家へと入った。