【完】イチョウ~あたしは幸せでした~
「ごめん、分かんない…」
「そっか。…鈍感なんだな……」
と、何かをボソッと呟いた彼。
「え?あ、あの…名前……」
「俺、桜井蒼、よろしく。
んじゃあ、帰るか。」
そう言った桜井くんの後ろについて帰り道を歩いた。
「お前んちどこ。」
「ここ。」
「え?もう着いた?これ…」
あたしは小さく頷いた。
薄暗くて相手に伝わるかどうかも分からなかったのに。
「送ってくれてありがとう。」
「おぅ。じゃあな。」
そう言って引き返していく桜井くん。
その背中を愛おしそうに見つめているあたしが居た。