恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
「今日のお昼、何食べました?」
レンズを覗いたまま、慶次郎さんが言う。
「へ?」
と驚く私を、パシャ。
「自然な表情を撮りたいんです」
さっきまでしなやかに見えていた指が、今はゴツゴツして見える。
細身だけど、脱ぐと筋肉がすごいんだろうな、と思わせる腕の筋肉。
「パスタを食べました」
「ぺぺロンチーノですか?」
「え? ニンニク臭かったですか?」
「はははは。まさか。僕がぺペロンチーノが好きなだけですよ」
カメラマンとお客さん。
ただのそんな関係。
それなのに、彼に見つめられると、心の中までハダカにされちゃうようなそんな気持ちになる。
不思議な人。
外見をいくら着飾っていても、この人には全部見られている気がした。
私のだめなところや弱い部分を全部、ファインダーを通して見られている。
ゾクゾクするような時間だった。