恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~


「綺麗に撮れましたよ」

満足気な表情で慶次郎さんはカメラをそっとテーブルに置いた。

「ありがとうございます」

ペコリと頭を下げると、慶次郎さんも同じように頭を下げた。

「仕上がりを楽しみにしておいてくださいね」

にっこりと笑ったときにできる口元のしわが、何とも言えず素敵だった。

推定年齢、三十五歳。
指輪はしていないけれど、きっと既婚者。

「じゃあ、また来ます!」

これ以上、慶次郎さんと一緒の時間を過ごしちゃいけないような気がして、店を出ようとした。

「ご連絡先だけ書いてもらえます? 出来上がったらお電話しますので」

呼び止めるその声に、変な期待をしてしまう。

馬鹿だよね、私。
少しばかりイケメンなカメラマンだからって、何ドキドキしてんの?
これくらいの男、そこらへんにいるじゃん。

< 12 / 331 >

この作品をシェア

pagetop