恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
「あの、まずは謝らせて欲しいの。大北さんのこと」
車が走り出してすぐに私は切り出した。
前を向いたまま、慶次郎は頷いた。
「もう二度と会わないと約束していたのに会ってしまった。ごめんなさい。母の保険の契約を全部解約すると言ってきて、母に頼まれたの。それで、断れずに会うことになった。会う前に慶次郎さんに話すべきだったと思う。ごめんね」
「そういうことでしたか。胃が痛くなる日々を過ごしていたんですよ、僕は」
慶次郎の運転はとても丁寧で心地良い。
胃が痛くなる日々を過ごしていたと言った慶次郎。
わざとらしく、痛い表情を作る。
「何もなかった。大北さんとは本当にもう二度と会わない」
「あの後、仕事が入っていたから電話に出られなかったんです。でね、仕事終わってから何度も何度もかけたのに、真智さんの電話の電源が切れていた。それって、誤解しちゃいますよ」
慶次郎に電話をかけすぎて、充電が切れたんだった。
電話、くれていたんだ。