恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
付き合って3日後の仕事帰りに、野嶋写真館へと向かった。
「久しぶりだな」
会ってすぐにとても嬉しそうな顔をしてくれた。
「仕事の邪魔になるからすぐに帰るね」
「いいよ。アシスタントとして手伝ってくれればいい」
そう言ってくれた慶次郎だけど、私は顔だけ見られればそれで良かった。
「次のお客さんが来る前に帰るね」
予約のお客さんがあと10分で来ることになっていた。
深緑の着物姿の慶次郎は今日も素敵だった。
「今、ものすごく真智を抱きしめたいけれど、だめですよね」
書類を整理しながら、独り言のように言った。
そして、壁掛け時計を見上げる。
私は、その大きな背中をそっと抱きしめた。
まだ大丈夫だよね。
少しくらいいいよね?