恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
いつかは話さないといけないと思っていた。
でも、こんなに早く話すことになるなんて。
「もしかして、あのカメラマンじゃないわよね」
私が切り出す前にお母さんはそう言った。
眉をしかめたその表情を見ていると、彼を良く思っていないんだとわかる。
「あの人なの。でも、大北さんが言っていたことは全部嘘だから。彼は、本当に一生懸命仕事をしているし、独立して成功してる」
「仕事をコロコロ変える人は信用できないわ」
「コロコロ変えてなんていない。夢のために頑張っていただけ。その夢が叶ったの」
フ~っと長いため息をついたお母さんは、立ち上がった。
そして、厳しい表情で言ったのだ。
「私もいつ何があるかわからないから、お葬式の写真でも撮りたいと思っていたの。良かったら、その方に撮ってもらえるかしら?」
母のテストだ。
慶次郎が合格点をもらえるかどうかは、私にはわからない。
こうして、慶次郎を母に会わせることになってしまった。