恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
「真剣に結婚のこと、話し合っているの?」
母の質問に、私は答える。
「まだ付き合い出したばかりなの。これからゆっくり話していく」
大きな長いため息をついた母は、私の手を握って言った。
「ゆっくりしている年齢なの?考え直すなら早い方がいいわよ」
「お母さん、どうしてわかってくれないの?」
私は、コーヒーを飲み終える前に、母を残して店を出た。
川沿いを早足で歩く。
いや。
もういや。
私の人生は私のもの。
そう思っているはずなのに、母の言葉が頭から離れない。
母を喜ばせる結婚をしたいと願う自分がやっぱりいて。
丈治君の言葉がよみがえる。
慶次郎、助けて。
慶次郎、抱きしめて。
駆け出した私は、野嶋写真館へと向かっていた。