恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
サトさんと一緒にいることを知っているのに、電話をかけてしまった。
仕事中だから、気付くはずもない。
慶次郎は仕事中、自分の電話は鞄の中に入れていることが多い。
どうしてこんなに悲しいの?
不安だよ。
今の私は慶次郎に抱きしめられても不安なままかもしれない。
私自身の中に問題があるのだから。
川沿いをずっと歩いていた。
初めて見る景色。
綺麗に色づいた木々の葉。
川を泳ぐ鴨の姿。
涙がこぼれそうでこぼれない。
瞳の中を行ったり来たりする涙。
電車から見たことがある建物がいくつか見えた。
母を置いて来てしまった。
母はどんな気持ちで、店を出たんだろう。