恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
「私、もうお見合いなんてしない!」
お盆明けのけだるい月曜日。残業を終えた私は帰宅してすぐに母に『お見合い終了宣言』をした。
「どうして急にそんなこと言うの?」
大きな丸い目をもっと大きくした母が、私の両肩に手を置いた。
「お願い!真智!今回が最後でもいいから」
私、榎本真智。初めてのお見合いは二十七歳の時。親戚のおばさんの勧めで大手企業に勤める男性とお見合いをした。
あれから、十回近くのお見合いをした私が今も独身ってことは、結局どのお見合いも失敗してるんだよね。
自分から望んでお見合いをしているわけじゃないけど、心のどこかで、素敵な出会いや結婚を夢見てたんだと思う。
でも、お見合いをすればするほど、結婚への憧れが消えていった。結婚を前提とした出会いは、驚くほどにつまんなくて、全然ドキドキしない。
別にお見合いをしなくちゃいけないくらい結婚に焦っていたわけじゃないんだけど、漠然と、早く結婚しなくちゃ!って思うようになって、それはきっと母を意識してのこと。
しかも、母に気に入られる相手じゃないといけない。
早く結婚しないと幸せになれないような気がしてきて、頭の中が“結婚”だらけになった時期もあった。
でも、その結婚って私の為の結婚じゃなく、母を安心させる為の結婚だったんだよ。