恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
第5章
料理教室
―料理教室―
慶次郎のことを考えない日は一日もなかった。
別れているのに、別れていないような。
慶次郎にふさわしい女性になるために努力する日々。
着付け教室に行くたびに涙が溢れそうになった。
着物を着る時の、厳かな雰囲気。
心が穏やかになる。
慶次郎はこんな気持ちになりたくて着物を着ているのかな、と考えてしまったり。
約束があるわけでもないのに、いつかよりを戻せるんだと信じていた。
そうじゃないと、自分がおかしくなりそうだった。
愛していた。
ううん。
今でも愛してる。
こんなに愛せる人は最初で最後だと思うから。
でも、このままじゃだめ。
また同じことの繰り返し。
私と母の関係が変わらない限り、どうしようもないことはわかっている。
母と向き合えないまま、時間だけが過ぎていく。
遺影用の写真を取りに行った母だったが、
“ほら、これよ”と写真を見せてくれただけだった。
慶次郎と何か話したのだろうか。
慶次郎は元気だったのだろうか。
聞きたいことはいろいろあるのに、聞けなかった。