恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
私は、慶次郎との別れのことを、川北さんに話した。
川北さんは、表情をコロコロ変えながら真剣に聞いてくれた。
「つらかったね」
話し終えた私に、たった一言そう言ってくれた。
涙が溢れた。
泣くつもりはなかった。
でも、川北さんの優しい“つらかったね”という言葉に、涙が一気に溢れてしまった。
「大丈夫?」
手を私の頭に乗せた川北さん。
「ごめんなさい」
「別にいいよ。泣くのを我慢すると余計に悲しくなるから」
私の涙が止まるのを待って、川北さんが話し始めた。
「彼氏は、理想を追い求めている気がする。愛しているんだから、彼女の幸せを一番に考えるべきだ、と。自分の気持ちをもっとぶつけてもいいのに、自分が我慢することで彼女が幸せになるなら、と考えたんだろうね」
慶次郎の愛は、本当に大きいと思う。
でも、私の求める愛とは違っていた。
私は、あの時抱きしめて欲しかった。
“僕が幸せにするからお母さんを説得しよう”と言って欲しかった。
強引に私を求めて欲しかったんだ。