恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
「そんなことがあったんだな。それくらい榎本さんのことが好きなんだよ。でも、実際に付き合ってみて、恋から愛に変わった。だから、こうあるべきだって勝手に理想を求めてしまったんじゃないかな。彼はもしかしたら、榎本さんを待っているかもしれない」
それがわからなかった。
せっかく私のことを思って別れを選んだ慶次郎に、すぐに会いに行っていいのだろうか、と。
変わった私、として会いたかった。
そう言うと、川北さんは笑った。
「また、それも理想論だよ。会いたいなら会いに行く!それでいいんじゃないの?」
「そっか。そうなんだよね」
私は、待っているかもしれない慶次郎の姿を頭に浮かべた。
ドキドキした。
「と、いうのもまた理想論かもしれない。実際に、俺が今思っていることを言う」
腕組みをしていた川北さんが、テーブルにそっと手を乗せた。
「会いに行かないで」
静かに言った。
低い声で。
心に響く声。