恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
心の中で慶次郎と呼んでいたから、自然に口から出てしまった。
あわあわする私に、慶次郎は笑う。
「そんな呼び方されたことなかったんで、嬉しいですよ」
「すいません」
私が好意を持っていること、気付いた?
ただのカメラマンの名前を覚えちゃうなんて、不自然だよね。
「慶次郎って名前、お似合いです」
沈黙になるのが怖くて、会話を続ける。
慶次郎は、まだ私の写真を嬉しそうな表情で眺めたままだった。
「ありがとうございます。僕は、日本文化が好きでねぇ」
「そうですよね。だから着物なんですよね? 名詞も、筆で書かれてましたし」
って、どれだけ慶次郎に詳しいんだよ、私!
「気付いてくれましたか。そうなんですよ。日本文化って素晴らしいでしょ? 守りたいんですよね」
そう言われてみると、店の中に飾られている写真は日本の風景ばかりだった。
富士山や、どこかの民家、お寺、など。
それも息を止めてしまうような写真だった。