恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
「でね、今日はお願いがあるんですよ」
適当に料理を注文した後に、慶次郎が私の方に体を向けて、背筋を伸ばした。
カウンターに座っている私達は横に並んでいた。
触れそうで触れない体。
微妙な距離。
「着物を着て写真を撮らせて欲しいんです。モデルになってもらえませんか?」
モデル?
嬉しい反面、やっぱり仕事上のお誘いだったのか、とショックを受けている私がいた。
「モデルですか? 私なんかでいいんでしょうか?」
「真智さんを撮った時に感じたんです。真智さんは着物が似合うと思うんです。着物姿の真智さんをを撮りたい」
断る理由はない。
また慶次郎に写真を撮ってもらえるなんて嬉しいに決まっている。
「私で良ければ構いませんけど。私、着物似合わないですよ」
私はハッキリした顔立ちで、着物よりもドレスが似合うとよく言われていた。
小さい頃から着物ってあまり似合わなかったんだよね。
「絶対に似合います。僕が保証します」
自信満々にそう言う慶次郎。
まっすぐな瞳で、私を見つめる。