恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~




「すいません。まだ早かったかしら」




ドアから少し顔を覗かせた女性は、どこかで見たことのある顔だった。





「あ、もしかして」



「真智の母です。お久しぶりですね。お元気かしら?」





仕事に向かう前に僕の店に寄ってくれたそうだ。




真智のお母さん。


真智がとても大切に想っている人。


別れの原因になった人でもあるけれど。







「どうぞ、お茶でもゆっくり」




「いえいえ、すぐに仕事に行きますので。この間の写真どうもありがとうね。とても綺麗に撮れていたわよ。真智に見せたんだけど、全然ちゃんと見てくれなくてね」





真智。




その名前を聞くだけで、胸が締め付けられるんだ。




キューっと苦しくなる。



これを女性は、“キュンキュン”というのだろうか。



僕には経験がないからこの胸の切ない感じが何なのかわからない。





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