恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
「真智!お願い!真智が前から食べたいって言ってた生バームクーヘン買ってくるから!」
行列のできる美味しいバームクーヘンの誘惑に負けそうな私は、とりあえず相手の情報だけ聞いてみた。
「どんな人なの?」
「それがね、今回の人は今までで一番素敵よ! きっと気に入るわよ」
キラキラした母の瞳を見つめていると、お見合い終了宣言を撤回してしまいそうになる。
「でも、本当に本当に今回で最後だよ!もう絶対にお見合いしないから」
どうして急にお見合いをやめると言い出したかと言うと、会社の同僚がドラマのような出会いをしたからなんだ。そのドラマチックな恋愛話を今日のランチタイムに聞いて、私はハッとした。
私は、まだ若い。
ドキドキする恋愛をしてもいいじゃない?
恋に溺れちゃうのも、楽しいじゃない?
母の勧めるお見合いをするたびに、自分が安くなっていく気がしていた。
もうお見合いはやめよう。
お見合いをしても結婚できない。
それなら、恋愛を楽しめばいい。
しばらく、結婚のことを考えるのはお休みにした方がいいんだよ。
「最後でいいから、お見合いしてくれる?」
もう答えは出ているのに、焦らす私に母が言った。
「生バームクーヘンに、ふわとろオムレットも付けちゃうから!」
私は静かに頷いた。