恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
「紫のお着物、きっとお似合いになりますよ」
話し方も穏やかで好感が持てる。
慶次郎がチョイスした着物はシックな紫。
私をよくわかっているなと思った。私が選ぶとしても、きっとこういうシックなものだったと思う。
「慶さんが、真智さんには絶対にこのお着物だって言ってたんですよ。お会いして、私もそう思いました」
慶さん。
その響きに、胸がチクンと痛む。
私よりも、彼を知っている。
当たり前だけど、私よりも、彼との付き合いが長い。
ふたりの関係を勝手に想像して、嫉妬してしまいそうになる。
「ありがとうございます」
うつむきながらそう答えて、視線を慶次郎に向けた。
背景やカメラのチェックをしている真剣な横顔。
素敵すぎる。
仕事をしている男性は素敵だと言うけれど、私の職場の男性は仕事中全然素敵じゃない。
愚痴ばっかり言ってるし、ストレスで押しつぶされそうになっている。
やっぱり、好きなことを仕事にできるって素晴らしいことなんだろう。
なかなかそんなことができる人はいない世の中だけど。