恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
「慶さんの見る目は確かなんですよ。私も成人式の着物を慶さんに選んでもらったんですけど、評判が良くって~」
成人式の着物を慶次郎に選んでもらった、とはどういうこと?
どれだけ長い付き合いなのです?
「慶さんは、日本の文化を守る会の会長なんです」
私の帯をぎゅぎゅっと締めながら、サトさんが言った。
「え? そうなんですか?」
と驚く私に、遠くから慶次郎が言う。
「おい、サト! 適当なこと言うんじゃないよ」
その馴れ馴れしい言葉遣いに、ふたりの歴史を感じてしまう。
「えへへ~! すいません。今のは冗談なんですけど、本当に会長になれるくらい、日本文化を愛してるんですよ。そこ、ほんとに尊敬しちゃいます」
慶次郎に聞こえるように、大きめの声で話すサトさん。
「この紫のお着物を見つけたときの慶さんの嬉しそうな顔ったら、ねぇ」
鏡に映っている紫の着物姿の私。
似合わないと思っていた着物だけど、目を疑ってしまうくらいに似合う。
「わ~! 本当によくお似合いです!」
サトさんの声を聞いて、慶次郎が覗きに来た。
褒められちゃうのかな、私。
「思った通りだな」
チラっと覗いた慶次郎と鏡越しに目が合う。
「やっぱり、思った通り、よく似合う」
満足気にそう言った慶次郎の顔にときめいちゃう。