恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
「慶さん、まだですよ! ヘアメイク終わるまでお預けですから!」
「はいはい。じゃあ、よろしく」
そう言って、慶次郎がまだ準備をしに行った。
「髪をアップにすると、また雰囲気変わると思います。今日は、二種類のアレンジを考えていたんですけど、慶さんから髪はアップにするようにと注文があったので、そうしますね」
この撮影のために、ふたりは打ち合わせをしているんだ。いつ、どこで、どんな風に話しているんだろう。
髪をアップにし、ところどころからクルクルした髪の束が揺れ、そこにキラキラした和風の飾りがくっついている。
和風なのにどこか洋風な雰囲気も醸し出すアレンジは、とてもお洒落で自分では絶対にできない。
「さすが、ですね。着物の時は、いつも平凡に髪を上げるだけでした」
「本当によく似合います。素敵です! あとはメイクですね。これもまた慶さんから、ナチュラルにしてくれって言われてるんですよ」
「あ、そうなんですね」
私は、時々鏡越しに見える慶次郎の背中を探していた。
「慶さんのこだわりって、絶対完璧なんですよ。私も何度も慶さんに写真撮ってもらってるんですけど、どれも最高なんですよね」
無邪気に話すその心の奥には、私への嫉妬が見え隠れしていた。
サトさんは、慶次郎のことが好きなんだ。
「心まで写すカメラマンって感じですよね」
私は、負けてたまるか、と慶次郎を知り尽くしているかのようにそう言った。
「真智さんは、慶さんの特別な人、なんでしょうね」
慶次郎には聞こえないとても小さな声で呟くサトさんは、無理したような笑顔をしていた。