恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~


「では、始めます」

この瞬間が好きだ。
カメラを構える姿。
真剣な眼差し。
手つき。

和服の袖をまくりあげる。

何度もポーズを変え、表情もいろいろ注文され、私はモデルとして頑張った。
伝えられない想いを表情で届けようと思った。
“好きです”と。

そう心の中で唱えながら、カメラのレンズを見つめた。

被写体としてでいい。
私を好きになって欲しい。

今だけでもいいから。
私だけを見て。
もっと。

もっと見つめて。


体が燃え出しそうなくらいに熱かった。
触れられているわけでもないのに、慶次郎に感じている自分がいた。
もう止められない。
この想い。


「リラックスして」

まただ。
また心の奥を覗かれているような気分になる。

裸になるよりも恥ずかしい。
全部見られている。
この人に嘘はつけない。

「着物が似合わないと思っているのは真智さんだけですよ」

写真を撮りながら、さりげなく髪を耳にかける仕草が好き。

「今の自然な笑顔、最高です」

ヌード写真を撮られているわけじゃないのに、体が燃え出しそうだった。

「綺麗です」

褒められると、下を向いてしまう。

「その照れた顔、またまたかわいいですよ」

「もうっ! からかわないでください」

慶次郎は、くくくと笑って、また真剣な表情に戻る。

私は恋をした。
もう、母のために生きることをやめる。

私の人生は私のものなんだから、好きなように、生きていい。

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