恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
近付く距離
-近付く距離-
すっかり暗くなった街の中をゆっくりと歩く。
一緒にいて落ち着く人。
暗くなった空を見上げると、ぼんやりした三日月が見えた。
昨日と同じバーに入り、奥のソファ席に案内された。
小さなテーブルを挟んで、真っ赤なソファが向かい合っている。
テーブルが小さいから、ふたりの距離はとても近かった。
足が時々当たる。
息が届きそう。
「今日は本当にありがとうございました。注文多くて、大変だったでしょ?」
疲れたように目をこすりながら、慶次郎が微笑む。
その疲れたような顔がまた好き。
「私でお役に立てたのなら嬉しいです。緊張しちゃって、表情が硬かったと思うんですけど」
「いえいえ。とても素敵な表情でした。自然でしたよ」
「そうですか?」
右目の下に小さなほくろがある。
笑うとしわができる目元。
優しい笑顔。
「僕の見る目は確かだった。初めて会ったあの日から、僕はあなたを撮りたいと思ったんです」
熱い目で、私の目の奥をじっと見つめる慶次郎。
「着物、似合うよ」
その言い方が、たまらなくセクシーだった。
「あ、ありがとうございます」
「ふふ。その顔、僕のツボです。そんなに恥ずかしそうな顔をしなくてもいいのに。そんなに綺麗なのに、褒められることに慣れてない」
目をそらせない。