恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~
「最後だからね」
「わかってるわよ。相手の人、ちょっとだけ年上なのよ」
私がお見合いをOKしてから年齢を言うなんて母もずるい。
年齢、四十二歳。
ちょっとどころじゃない年齢差。印刷会社勤務。離婚暦アリ。
ありえないお見合い相手だった。
「これは無理」
冷たくそう言った私の前で母が手を合わせる。
「お願い! 真智! 今回で本当に最後でいいから。この人だけは会って欲しいの」
今年で三十一歳になる独身OL、榎本真智は、母の『焼きマカロン』という最終手段に負けて、お見合いをすることになった。
私は今、製薬会社で気楽に楽しく働いている。人並みのストレスは抱えていると思うけど、働きやすい職場で人間関係も良好。
母は保険会社でバリバリ働くキャリアウーマン。
六十歳を過ぎた今でも社内ナンバーワンの腕前らしい。
そんな母だから知り合いも多く、お客さんから頼まれるお見合いを断れない。
私を利用して、母はナンバーワンになってるんじゃない?って疑ってしまうときもあるくらい。
調子に乗った母は、次から次へとお見合い話を持ってくるようになった。
私はいつからか、母が気に入る男性を選ばなければいけないって強く思うようになってしまった。
母に認められたい、母を喜ばせたい、そればかり思っていることに気付いたんだ。
私は、マザコンなのかもしれない。
精神的に母に依存している。
だから、母に頼まれるお見合いを断ることができない。
乗り気ではないお見合いだけど、少しは期待していたんだと思う。
毎回お見合い失敗後の落ち込みようといったら、ハンパない。
どんどん自分に自信がなくなっていく。
お見合いは私から断ることが多かったけど、時には先方にお断りされることもあった。
悔しい気持ちと、自分への失望感でいっぱいになるんだよね。