声が聴きたい
松田家
side秀
家は駅から20分ほどの住宅街にある内科小児科の開業医。
2代前から地元の町医者だったらしく、じいちゃんもだったけど親父も信頼されていて、まぁ、心中では憧れてる。
母親は、医者の父親を支えるため大人しく家庭に収まるって感じの人ではなく、社交的で活発。
俺が2歳になると、我慢の限界に達したらしく、駅の近くに店舗を見つけてあれこれやってカフェをさっさとオープンさせてしまった、そうだ。
開店以来人気が衰えず、時々雑誌なんかにも載ったりしてるが、それはそれで、父親のサポートも家庭のことも、要領よく器用にこなす母親を尊敬してる。
親父は「悠里が生き生きとしていて幸せなら、僕も幸せだからね」なんて今でも堂々とのろけてくれる……
で、俺はそこの一人息子。
車4台分の駐車場と端に駐輪スペースがある敷地を通り、『松田小児科内科医院』入口がある。一階が医院部分で二、三階が自宅。
入院施設はないが、緊急時には使えるように個室も用意されていて、待合室、診察室、処置室、それとトイレ。