声が聴きたい
こうして希美花の身勝手な都合により板谷家はバラバラになった。
置き手紙にかかれていたのは希美花の本心だろう。
周りからすると身勝手な都合にしかとらえられない希美花の選択。
見栄から始まった結婚、忘れていなかった過去の賛美……
だが、希美花からしたらただ、自分の気持ちに正直に、欲を我慢しない生き方をしてきた、いや、そうすることしか出来ない女性だっただけなのだ。
それでも、生きていく中で周りに愛情をもち、それを与えること、我慢すること、幸せの上には悲しみが隠れていることがあるということ、そういったことを感じたり理解したりすることが少しでもあれば、希美花自身も、もっと幸せになれたのではないだろうか。
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希美花は和希が帰宅する日の前日に、実業家の男性と彼の本拠地である韓国へ旅立った。
本当に、少しも和希を心配していなかったのだろうか……希美花の気持ちは判らないままだ。
和希は小2のこの時から、自分の名前を『和希』ではなく、なるべく『和』と呼んで貰うことにした、たかが一文字でも心が苦しくなってしまうから…………