声が聴きたい
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事実、どんなことが有ったのかその日はよく分からなかった。
ただ、和希は生きている、それが無性に嬉しかった。
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他称side
昨夜、佐藤家にかかってきた電話は、和希の実母、希美花からだった。
希美花は、和希が出なければ無言で切ろうときめてかけた。
「はい、佐藤です。」
「……和希?」
「……?はい、そうです。」
「お母さんよ……」
「えっ?」
「和希、お母さんに会いたい?」
「はっ?……えっと、」
「お母さん、和希がどうしてもって言うなら、迎えにいってあげてもいいわ」
「…………あ……」
「明日、というか、今夜かしらね、そうね……5時に駅にいらっしゃい、車で行くから。」
「聞いてるの?理解した?」
「うん……」
「そ、じゃあ、この事は誰にも言っちゃダメよ、わかったわね?」
「ん……」
「じゃ、」
和希は既に切れている電話機を眺めて今の会話を振り返る。
母が、自分を呼びに来た。
いらないわけではなかった?