声が聴きたい
駅前広場にある時計が5時を指した。
車は、業者のトラックなどばかりで、母親のものと思われるものはまだ来ない。
駅が、動き出したらしく、いろんな音や動きが感じられるようになってきた。
30分、始発が動き出す頃になり、人も少しずつ増えてきた。
駅前でリュックをもち、土曜の早朝から立っている小学生をみんな、ジロジロと見ていくが、声をかけるものはいない。
6時、まだ、母は来ない。
足元をじっと見つめる和希の様子が少しおかしい。
春先の早朝に一時間以上外にいたせいか、微かに震えているようだった。
横を通りすぎたサラリーマンが、「ッヒック……」振り替えると靴の上にいくつも涙のシミをつくり、静かに泣いている和希を心配し、自身には時間もなかったので直接は声をかけず、駅員に話した。
それを聞いた駅員が和希を確認し、「ねぇ、君はどうしたのかな?家族とはぐれたかな?」後ろから声をかけたが振り向かない。
不思議に思いながら肩を叩きながら前に回ると、初めて気がついたようにビクリとしながら、駅員を見る和希。