声が聴きたい
そこに、駅員は『お父さんの名前、お家の電話番号、君の名前』と書き、ペンを差し出した。
チラッと和希に目線を合わせた後、優しく微笑んでくれる駅員に、和希の気持ちが少しだけ緩んだ。
そして、黙って出てきてしまった事を今更ながら思いだし、素直に書けずにいた。
カチャリとドアの音がして、駅員がそちらをみると、その気配に気がついたのか、和希も視線を動かすと、警官が2名入ってきた。
そして、まだ、何も答えられない和希を他所に、警官と駅員は話を進め、警官がこちらに近づく。
「まだ、小学生だね?」と正面から聞かれて頷く和希に、「これから、お巡りさんと、警察の建物に行くよ。」と言われた。
二人のうち、一人は女性で、そっと和希を支えながら立たせる。
駅ではなく、警察署に連れていかれるのが怖くて、イヤイヤと首を弱々しく横に振るが、「お話しを聞いて、お母さんたちに来てもらうのに、ここよりもいいからだよ」と優しく諭される。
それでも、はっきりと口元が読めるわけではないため、何か大変なことになるのではと、ドキドキが強まった。