声が聴きたい
ここから、持ち前の真面目さと努力で、勉強等をこなしていった。
心が落ち着くと、右の耳だけだが、少しずつ音を取り戻した。
それを家族皆が喜んだ。
今、耳は聴こえないけれど、今まで通りに普通に発音して話せるから、他の生徒とは違ったカリキュラムを担任が考えてくれた。
通院を止めたばかりの心療内科にも、また、通い出した。
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夜になると、無意識に電話を見ては顔をしかめる和希を家族は辛い気持ちで見守った。
電話のベルの音の周波は聴こえないようだった。
もう、2度と母親からの電話には出たくない、傷つきたくないという防衛本能かもしれない。
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本当の心からの笑顔、大好きな人の声、和希が取り戻したいものはいつ、和希のもとに帰るのだろうか。
追い撃ちをうけた和希と家族らから、希美花の話はそれ以降出ることはなかった。
希美花は1ヶ月ほど一時帰国していたが、そのまま、今度はアメリカについていったようだった。
そして、和希がまた、音を失う日まで一切の連絡はなかった。