声が聴きたい
小学卒業まで
優一side
中途失聴者として、俺とは違う、支援学校に通う和希は、訓練により読話で相手の言いたいことをほぼ、理解できるようになり、一見して、会話をしている様は聴覚障害があるとは、わからない。
最初のうちは俺や秀もゆっくりめで、口元を大きく動かしていたが、4年に上がる頃には普通のスピードで大丈夫になった。
ただ、正面を向いてないとダメだから、肩を叩いて気づいてもらってから話す。
いきなり背後から「和~~」なんて言うことはなくなった。
ただ、今まで普通に発音、発声できていたから話せるけど、自分の発した声が聴こえないのが不安なのか、和希の話すスピードはゆっくりになり、一語一語を確かめるように発するようになった。
精神が落ち着きを取り戻し、ストレスが少しだけ軽くなってきたらしく、柔らかい表情の増えた5年生の頃から、右の聴力が高度ではなく、中程度まで回復してきた。
ささやきなどはまだまだ聞き取れないが、大きめな音や会話なら分かるようになった。
ただ、電話の着信だけは、まだ無理だった。