声が聴きたい
和希は、5年生の冬からパソコンを学校で習い、あっという間に習得し、父さんの真似事をしていた。
1人黙々とパソコンに向かって何やら図面らしきものをつくっているときは、真剣な眼差しの中に楽しそうな雰囲気を感じる。
秀が『医者』を将来の第一目標に決めた頃、和希は、『デザイン』に関わっていきたいと、心の中に決意したらしい。
らしい、というのは、小学生の当時、和希から聞いたことはなく、高校の進路決定で文系、それも芸術学部のデザイン学科辺りを目指すと聞いて、いつから考えていたのか質問して分かったからだ。
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秀は和希を弟の俺よりも、本当に大切に守り、常に大切に尊重してくれた。
小学生の恋愛感情が、どれほどの真剣さをもっているのか。
そんな質問に、大抵の大人は『子供の気持ちなんて恋に恋してるようなもの』とでも言って、本気で愛しているなんて、思いもしないと思う。
でも、俺は少なくとも秀と和希(まぁ、和希の秀に対する気持ちがはっきりと表に出たのは中学だけど)の感情は本物の愛だって言い切れる。