声が聴きたい
和希が、周りに対して臆病になったり諦めそうになると、秀はかなり怒る。
和希の怖じ気付いてしまう心を、『負けるな、手を抜くな』と叱咤する。
傷付いた和希を、真綿でくるむように大切にする愛情もあると思う。
でも、もし、俺らがそれを選択していたら和希は、ここまで立ち直れずにいたと思う。
小学生のころにそれが分かってたわけじゃない、今思えば、あの頃から無意識の内に、俺ら家族も秀達家族も、『優しさからの厳しさ』の態度をとっていた。
なぜか……?
そのほうが、かばうよりも、出来たとき乗り越えた時の和希の笑顔が本物に近づいている、とわかるから。
6年生になってからも、相変わらず秀は家に夕飯まではいて、3人で過ごすことが多かったが、和希が少しだけ距離を取り始めた。
風呂も今まで俺とは一緒だったけど、それもなくなった。
まぁ、口にしなくても何となく理由はわかる、けどね。
体つきが変わり始めた。
女子、男子ってくくりよりも、女性、男性になっていく10代の前半になったから。
俺も、気恥ずかしい朝とか、あるし、ね。