声が聴きたい
「苦労はする人の受け取り方次第で苦労ではなくなる。だが、そうはいっても辛いことはこれから山のようだ。そんな中でも、優一が目指す医療に長けた救急救命士は心身ともに強靭でなければ耐えられない激務だと思う。そうなったとき、側に居てやれない……」
ポロリ……じいちゃんの目から涙がこぼれたように見えた。
「だからな、この腕時計を私と思って貰って、いつまでも、お前に寄り添わせてくれないか?私の自己満足なんだがな」
「じいちゃん……おれ、じいちゃんが側に居てくれんなら、どんな困難でも乗り越えられそうだよ、頑張るよ……」
「っ……おれ、部屋、行くなっ」もう、耐えられず急いでじいちゃんの部屋を出て二階へかけ上がった。
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それから二ヶ月後の4月、まだ桜が散る前にじいちゃんはばあちゃんのところへと行ってしまった。
父さんは、しばらく落ち込んだ顔をしていたが、「よしっ、リフォームするぞっ」といってリビングにじいちゃんばあちゃんの戸棚式の仏壇を作った。
いつも、俺らを見守ってもらい、いつでも話が出来るように。