声が聴きたい
ただ、夜八時に帰宅した和希は、いや、和希と秀にとっては、一生忘れられない日になったらしい。
後で秀に無理やり聞いたら、羨ましいのと姉貴ってことが気恥ずかしいのとで、複雑だった。
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秀side
中三のクリスマス。
その日だけは勉強を休んで、和希と二人で出掛けた。
昼に小綺麗なレストランでランチを食べて、俺は、意を決して和希に聞いた。
「和……俺はさ、ずっと和と一緒にいたいと思ってるし、そのためになることなら、苦労でもないしやりとげる。そのくらい真剣なんだ。わかってもらえる?」「うん、私もわたしの、全てで、秀くん、好き、大切、だよ。」
ふぅ~~っと呼吸をして「今日……和を……だ、抱いても、いい?」目を見つめて質問する。
大きな瞳をさらに開かせて俺を見つめる和希。
どのくらい待ったか……「う、ん……いい、よ……」小さな返事が返ってきた。
おもわず抱き締めながら「大切にする、大好きなんだ……ありがとう……」
そして、「俺の、部屋、で、いいかな?」
ホテルも考えたけど、クリスマスだし、中学生だと咎められてしまうのも避けたかったから。
それからは手を繋いで黙って歩いた。