声が聴きたい
入院から10日ほど経ち、いったん退院して様子を見ることになった。
6月も終わろうというころで、鬱陶しい天気が続いていた。
すっかり大人しくなってしまった和希、こんな状態の和希は小2以来、いや……あのときでさえもう少し、なんかこう……前向きだったと言うか。
今の和希は諦め、なのか、心が余り動かない感じがした。
秀が傍にいても、瞳に悲しみがあるような、そんな気がした。
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夜、日課のランニングをしてもう少しで家に着くってところで、派手目の女性に呼び止められた。
「優一、よね?」
まとわりつく感じの甘い声が、俺の名前を呼んだ。
勢いのついた身体をどうにか数歩で止めて、声のした方へ向くと……胸元を強調したような露出の高いワンピースを着た、希美花、伯母がいた。
「誰?」何故か希美花だとわかってしまったのを、さとられたくなくて、他人のように聞いた。