声が聴きたい
いつもの秀と和希
「和、おはよ」開いた玄関から顔が見えたその瞬間に秀が言う。
「秀、おはよう、今日も、ありがと。」可愛い笑顔で玄関を出ながら秀に向かって左手を差し出す。
「しゅ~ぅ、うぅ~っす……」と声をかける俺をチラッとみて「……はよ」だけ言うと、右側で和希と手を繋いで(もちろん、指を絡めた恋人繋ぎだ)歩き出す。
俺は和希の右側に並んでいて歩く。
「担任さぁ、和のところ、誰?」和希の目を何度も見ながら聞く秀。
「え、と……田中、先生、数学の。」
「あぁ~あいつか」俺が返事すれば、俺の顔を見ながら「あいつ、なんてダメ」とたしなめられた。
それからも他愛ない話をしながら8時20分前に門をくぐる。
広い敷地を通り、下駄箱に行く。
750人近い生徒が通うこの高校、下駄箱周辺は混雑している。
秀はまず、自分の靴を履き替える、和希と手を繋いだままで、和希は俯いたまま。
そして、次に和希の場所に行き、待つ。
履き終わるとそのまま教室へ、去年は同じクラスだったから一緒に入っていった。