声が聴きたい
既に和希が弁当の荷物をかかえて立ち上がり、前と後ろのドアを交互に見ている。
2組は前方のドア側に教室があるので、普通に考えたら前からだろう。
案の定、秀はその和希を見て「フッ……」笑ってしまってる。
また前を向いた和希と秀の視線がぶつかった……瞬間、パァ~と笑顔になる。
早足でドアまで来たので「お待たせ、和、よほどのことがない限り、俺らは前からくるぞ?」と馬鹿にしたように俺がいえば「……っ!そうかぁ……」ようやく気がついたらしく、恥ずかしそうにクビをすくめてた。
「和をいじめんな」和希の肩を抱き寄せながら言う秀に「いや、教えてやっただけだから、いじめてねぇから」と言い返す俺。
3人で通称3年棟の1階にあるラウンジに向かった。
食堂はないが、購買部で軽食や弁当を買うこともでき、そのラウンジは昼食時と放課後、飲食が許されている。
ガラス窓が大きくグラウンドに面していて、陽射しが気持ちの良い場所だから結構賑わってる。
1年生の最初の頃は先輩の視線に遠慮してたが、夏休み以降、このラウンジで食べるようになった。