声が聴きたい


例えば、1年生としてしばらく過ごした5月、和希と話をしている秀に声をかけた2年の女子が和希を無視するように、秀の体に引っ付いてみたり、腕や肩を触ったり……そして「あなたさぁ、気を利かせていい加減向こう行きなさいよ、それとも、あなたが彼女だとでも言うわけ?」と暴言を吐いた。


和希がすぐ傍にいるから暫く我慢してたらしい秀がそれを聞いた瞬間、その先輩の首辺りの制服をつかみ自分から引き剥がした。


そして「先輩、俺は女にも容赦しないんだ……俺の大切な和希を蔑ろにしバカにした罪は重いんだ、覚悟しろ……」低く怒りを含んだ声、冷酷な眼差しで言い放った。


「ひっ!……」今になり慌てたその女子を本当に思い切り突き飛ばす勢いで押しやった。


『ガシャガシャ~ンッ!!』と強烈な音と、机や椅子と一緒に床に倒れこむ先輩。


秀の本気をみたその先輩は青ざめて痛さも忘れて教室から逃げていった。


こうしていつも全力で下がることなく和希を守ってきた。


だから学校内では『松田が和希を溺愛してる』ってのは先生ですら常識だった。


放課後、ちゃんと廊下に待ってる和希と学校を出て、そこで別れた。

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