声が聴きたい
手元を覗くと小さな細長いケースを見ていた。
「それ、なに?」聞けば「これは、リップケース、来週、加奈子ちゃんの誕生日、なの。」と返事。
「ふぅ~ん」
まぁ、男子なんてみんな、こんなもんだよな?
それからあと何かを選んで「レジ、行くね」と言うから「了解」と、二人で移動……レジは混んでいなくてすんなり終了。
「ちょうど、良かった。秀……ありがとね。」
笑顔の和希。
「よしっ、じゃあケーキ屋な?」と店を出て歩き出した。
雑貨屋ビルを出てから家の方へ向かって、ショッピングタウンの端っこに。
そこから角を曲がり、静かな通りに出る。
その通りには昔からの店や、ショッピングタウンには入らない個人のこだわりの店などが多くあった。
その中の一軒に、最近、店主が変わったらしい改装したケーキ屋があるのを春休みに見つけた俺と和希。
「何個、買えばいいか?」
「ん~、秀、秀パパ、ママ……優……お母さん、お父さん、わたし?7?」
「和は1つじゃ無理だろ?」笑いをこらえて言う。