声が聴きたい
「うっ……そう、だけど……違う、もん」と恥じらってる和希。
「俺も2つ、和も優も、な?だから10個、で、半分とかで食おうな」と言ったときにちょうど店の前に着いた。
フランス風とでもいうのか、派手さはなくて可愛いのに大人びてる、そんな雰囲気の外装でガラス扉を開けると『リィ~ン……』小さめの澄んだベルが鳴った。
入るとガラスケースは左手から奥に向かって伸びていて、目の前は2つ、テーブルを棚にしてるものがある。
早速選びだした俺たち。
ガラスケースの内側には落ち着いた女性の店員、その奥のガラス壁の向こうの厨房には男女二人がケーキを作っていた。
販売の店員は声をかけることはなく、さりげなく俺たちを観察してタイミングを計ってるみたい。
しばらく、ガラスケースの前をいったり来たり……「秀、決まった、よ。」と和希が俺の方を向いて言う。
すかさず「お決まりでしたらお申し付け下さい、承ります」と明るい声がする。
『ビクッ』とする和希の肩を抱き寄せて、そのまま背中をさする。