声が聴きたい


「わ、私と優一、は、親戚、でしたが事情が、あり……わたし、が、佐藤の家にきまし、た……」そこまで言うとふぅ~っと静かに深く息をはいた。


『自己紹介くらいでいきなりこんな重い話?……』今する話なのか……理解できず私を含めたみんなは、シラケたような冷たいようなバカにしたような、そんな視線を送った。


「私は、その事情、で、難聴に、なりました、と、特に左、耳です……でも今は、きょ、極度、の緊張とか、ストレス、とか、ある条件でひどく、聴こえなく、なります……ふっ、普段は大丈夫、ですから、あのっ、何の差もなく、してくれると、う、嬉しいですっ!」そこまでいうと思い切り頭を下げた。


「……」予想もしない話に教室の中は静まったまま、彼女も頭を下げたまま。


あたしは、いい子ちゃんじゃないし、最初に言ったみたいに可愛い彼女にムカついてたけど、震える声で、ありったけの勇気を振り絞って自分の事情を話す彼女のこと、なぜだか「フフフッ」と笑ってしまった。


静かな教室に、あたしの笑い声は響いて、ビクッと彼女も顔を上げた。


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