声が聴きたい
「さと~さん、あたし、安藤加奈子、あたしの秘密は和希だけに後で教えてあげる」と大きめのハッキリした声で言えば、クラスメイトも固まりがとれたのかフッと教室内の緊張が解けて、「佐藤さん、よろしくぅ」や「いきなし、なんか緊張したぁ」「安藤の秘密ってなんだよ~」なんてさっきのシラケた感じは無くなり、騒がしくなった。
あたしと目が合った彼女はニッコリと、ホントに嬉しそうにキレイに笑った。
そこで担任が「はいっ、ほらまだ自己紹介の途中よ、佐藤さんのことは特別扱いはしない、けれど、思いやりの気持ちは忘れないでね。きっと楽しい、素敵なクラスになるわね、ねっ?安藤さん?」
なんて呼び掛けられて、でしゃばったのが恥ずかしくなり目をそらした。
自己紹介が終わり、委員会決めやらホームルームばかりの半日が終わり「明日からはお弁当を持参、通常授業が始まりますから……」担任の挨拶でようやく下校時間になった。
半日、佐藤さんの回りには、やはり何となく遠慮というのか、みんな遠巻きにしていて誰も近づいてなかった。