声が聴きたい
この、佐藤家の家庭事情は悪意のある数人にはイヤな感じにしばらく噂されたが、最初に自ら話したことで、案外自然に受け入れられたみたいだった。
あたしは、帰りに声をかけてみようとまだ支度をしていた佐藤さんの横に立った。
気配を感じたのか、フッと顔を上げパァ~っと明るい顔をあたしに向けてくる。
そしてニコニコと邪心のなさそうな笑顔で「安藤さんっ、秘密、知りたい、な」といきなりの発言。
「ぶっ、はははっ、和希、いきなりなんだ」なんだか見た目の可愛さから、か弱くてって甘えたでズルい子だって勝手にムカついてた自分が恥ずかしくバカらしくなった。
「いいよ、とびきりの秘密、教えてあげる!あっ、勝手に呼んでたけど、和希ってこれからも呼んでいい?」と聞けば「えっと、良かったら、和(かず)、でもいいかな?私、そう、呼ばれるの、好き、なの……」と返ってきた。
それから「あの、ね。帰りは、優と、その友達、も一緒なの……それでもいい、かな?」と聞かれる。
「うん、もちろん。佐藤君とはあたし、5、6年で一緒のクラスだったんだよ。」と言えば「じ、じゃあ、秀君、も分かるね。松田君。」との返事。