声が聴きたい
side秀
約束の9時30分、少し前に佐藤家のインターフォンを鳴らす。
今日は和希の誕生日当日、デートの日だ。
誕生日になりたての午前零時にメールで『happybirthday』を送り『ありがとう』をもらい迎えた今。
ガチャリ……重みのあるドアが開いてすぐに和希が迎えてくれる。
その姿をみて、可愛くて思わず無言になる。
「秀……おはよう……えっと、だめ、かな?」ドキドキしてるっぽい和希の声がすっと耳に入り、ハッとする。
「ダメじゃない、あんま可愛いから声が出なかっただけ、和、おはよう、すんげぇ可愛い……家に居たいかも……」願望を思わず呟く。
「あ、あ、りがと……」真っ赤な顔になった和希が更に可愛い。
気を取り直し「行こうか」と手を差し出せば……
「うんっ!」元気な返事が返ってきて、ベージュのストラップのついた高めのウェッジソールパンプスを履いて、「お待たせ、しました。」と俺の手をとり微笑んだ。
「「行ってきます」」二人で言えば「はぁい、いってらっしゃい」というおばさんの声と「いってらぁ~~」という優の声が閉まるドアの向こうに聞こえた。